労務

従業員を雇ったら

従業員を雇った場合、様々な手続きが必要になります。

労働条件の通知、労災や雇用保険、社会保険の手続き、税金に関わる手続きなどがあります。また大前提として労働基準法などの労働関係法に定めた、労働時間や休日、休憩、有給休暇などにも対応しなければなりません。

労働基準法への対応

労働に関する条件は、何の制約も無い状況では、事業主に有利な条件で契約される場合が多いため、「労働基準法」等の法律で労働者にとっての最低限の条件がいくつも定められています。近年は人手不足から人員の確保が難しくなっています。必要な人材を確保するためには、最低限こうしたルールにはしっかり対応することが重要です。
代表的なものには以下のものがあります

  • 労働時間は1日8時間以内、週40時間以内
  • 毎週少なくとも1日は休日を与えなければいけない
  • 法定労働時間超えて働かせる場合は割増賃金を支払わなければならない
  • 6ヶ月以上勤務し8割以上出勤した場合は有給休暇を付与しなければならない

※上記は一例で、様々なルールが定められています。

労働条件の通知

労働基準法では、労働者を雇う時に労働条件の明示を義務づけています。また、明示しなければならない労働条件の項目も明確に定めがあり、この内いくつかは、書面で明示しなければならないとしています。これが、「労働条件通知書」や「雇用契約書」いわれるものです。

必ず明示しなければならない事項
  • 労働契約の期間
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  • 就業する場所、従事すべき業務
  • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換
  • 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期、昇給
  • 退職(解雇の事由を含む)
  • 昇給に関する事項

上記1~6は、書面(労働者の希望があればメール・FAXも可)により明示しなければなりません。

定めをした場合に明示しなければならない事項
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払いの方法、退職手当の支払い時期
  • 臨時に支払われる賃金、賞与、精勤手当・勤続手当・奨励加給・能率手当等、最低賃金額
  • 労働者に負担させるべき食費・作業用品等
  • 安全および衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償および業務外の傷病扶助
  • 表彰および制裁
  • 休職

労働保険(労災保険・雇用保険)への加入

労働保険は、「労災保険」と「雇用保険」を総称した政府管掌の保険制度で、セットで加入します。原則として労働者を一人でも雇用している事業主は、法人・個人を問わず必ず加入することが義務付けられています。

労災保険
労災保険は、雇用されている立場の人が仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。その保険料は全額、事業主が負担します。
原則として 一人でも労働者を使用する場合、すべての事業主が加入しなければなりません。なお、ここでの労働者とは、正社員だけでなくパートやアルバイトも含みます。
雇用保険
雇用保険は、労働者が失業した場合等に労働者の生活と雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するために必要な給付を行う公的保険制度です。保険料は、事業主と労働者の双方が負担します。
人を雇った場合、たとえ従業員が1人であっても、以下の条件に両方とも該当する場合は雇用保険の被保険者として手続きを行う必要があります。
  • 31日以上の雇用が見込まれる
  • 週の所定労働時間が20時間以上である
手続きの方法
労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所に提出します。そして、その年度分の労働保険料を概算保険料として申告・納付します。(提出先は、業種等によって異なります)
雇用保険の被保険者に該当労働者がいる場合は、上記のほかに、雇用保険適用事業所設置届及び雇用保険被保険者資格取得届を所轄の公共職業安定所に提出しなければなりません。いずれも該当する労働者を雇用した日の翌日から10日以内に行わなければなりません。
その年の年度末(3月31日)までに支払う賃金の総額の見込額を算出し保険料率を乗じた概算保険料を一旦納付します。年度末日以降、確定した賃金を元に算出した確定保険料との差額を次の概算保険料で精算する仕組みです。
こうした手続きの他、雇用保険に入っている労働者が退職した、新たに雇用した、育休を取得するなどといった場合には公共職業安定所での手続きが必要となります。
労働保険事務組合
労働保険に関するこうした事務処理の負担を軽減するため「労働保険事務組合」とい制度があります。当商工会議所も厚生労働大臣から認可を受け運営しております。

健康保険・厚生年金保険の加入

従業員を雇い適用事業所となる場合は、健康保険・厚生年金保険への加入手続きが必要になります。適用事業所とは法人または、個人事業所で常時5人以上の従業員がいる事業所です。
加入させなければならない従業員の加入条件は以下の通りです。

  • 常時雇用されている従業員
  • 週の所定労働時間が常時雇用されている従業員の4分の3以上かつ1ヵ月の所定労働日数が常時雇用されている従業員の4分の3以上である者

※常時501人以上を雇用する事業所は、一定の要件を満たすパート・アルバイト等の短時間労働者も加入させる必要があります。加入の手続きは、加入すべき要件を満たした日から5日以内に「新規適用届」を日本年金機構に届け出なければなりません。

所得税の源泉徴収義務

従業員を雇ったら、所得税の源泉徴収義務が生じます。毎月の給料の支払額から決められた源泉徴収税額を天引きし、原則、翌月の10日までに税務署に納めなければなりません。
また、年末には、従業員それぞれの年末調整も行う必要があります。